のんびりまったりぷかぷかと
アガサ・クリスティーの「アクロイド殺し」を読みました。
オチは知った上で読んだのですが、それを抜いてもずいぶん面白かったです。
ただ、確かにこれはオチを知らないほうが面白いな、とは思いましたが。
さてさて。
「探偵小説十戒」というのがあるのだそうです。
ミステリーを書く上の決まりごと、みたいなものでしょうか。
探偵も読者も、謎解きの前まで同じだけの情報を与えられていなければならない、とか言う内容だったと思います。
つまり、「最後の最後で読者が知らない情報を探偵が持ち出す」のはダメなんだそうで……。
全部を読者に見せたうえで、それでも感嘆せざるを得ないミステリーを書ける人って本当に尊敬します。
さて、追記で提出の小説に使う予定だった文章の一端です。
もったいない精神でここにひっそりと公開しておきます……。
オチは知った上で読んだのですが、それを抜いてもずいぶん面白かったです。
ただ、確かにこれはオチを知らないほうが面白いな、とは思いましたが。
さてさて。
「探偵小説十戒」というのがあるのだそうです。
ミステリーを書く上の決まりごと、みたいなものでしょうか。
探偵も読者も、謎解きの前まで同じだけの情報を与えられていなければならない、とか言う内容だったと思います。
つまり、「最後の最後で読者が知らない情報を探偵が持ち出す」のはダメなんだそうで……。
全部を読者に見せたうえで、それでも感嘆せざるを得ないミステリーを書ける人って本当に尊敬します。
さて、追記で提出の小説に使う予定だった文章の一端です。
もったいない精神でここにひっそりと公開しておきます……。
彼氏がゲイバーに通いだした。
友人からもたらされた情報であるが、双葉はそれ自体を咎めるつもりは無かった。今までもキャバクラや合コンに行っていた事はあったが、しかしきちんと「遊び」と「本命」を区別する人だったのだ。それを理解していたから、双葉は何も言わなかった。
しかし、一応「恋人」とか「彼女」とか呼ばれる立場にある双葉の誕生日をメールで済ませといて、自分はゲイバーにいそいそと向かうなんて、許せるだろうか。何も言わずにいられるだろうか。いられる筈が無かった。
即座にパソコンを立ち上げ、久瀬が通っていると教えて貰ったバーの店名を検索に掛ける。ヒットしたサイトを開けて店の場所を調べる。意外と近い事を確認すると、財布と携帯だけ持って、家を出た。
けばけばしいネオン街にヒールの音を響かせて歩く。双葉から出ているオーラのせいか、キャッチですら誰も声を掛けて来ない。一度だけ酔っ払いに絡まれたが、双葉は一瞥すらしなかった。
そして一つの店の前で足を止めた。店名を確認すると、店の前にいたキャッチを無視して中に入り、ぐるりと店内を見渡した。店自体がそこまで広くなかったおかげか、隅の方にある黒いソファーに手足を投げて座り、上機嫌で酒を煽っている久瀬を直ぐに視界に捕えた。久瀬の両隣りには些か男とは思えぬような美貌を湛えた此処の店員が控え、楽しげに談笑している。そんな「カレシ」姿を見た瞬間、彼女の中で何かが急激に冷めていったのを感じた。
双葉は声を掛けて来た店員を一瞥すると、人に会いに来たのだと告げて、真っ直ぐ久瀬の元に向かう。
まだ気付いていない久瀬に、ゆったりと口角を上げた。
そして、久瀬が座っているソファーとローテーブルを挟んだ向かい側に向きあう形で置いてある一人掛けのソファーにゆったりと腰を下ろした。
「こんばんは」
優しげに見える頬笑みを湛えながら双葉が声をかける。そこで漸くカノジョの存在を認知した久瀬の顔から一気に血が引いた。青いを通り越して白い。
その様子を面白げに眺めながら、双葉は口を開いた。
「彼女放っといて男に走るのね」
この言い方は少々この店の人たちに失礼かもしれない、と言う考えが一瞬頭を掠めたが、そんなこと気にしては居られなかった。何か言おうとしている久瀬に構わずに続ける。
「別に何しようが文句言わなかったわよ。今更干渉するのかって思っても仕方ないかもしれない。でもね、誕生日に彼女にメールを寄こすだけで自分はゲイバーに飲みに行く?――ふざけんじゃないわよ。そんなことされたら彼氏が男に走ったって思うじゃない。これならまだ風俗にでも通ってくれてた方が何倍かましだったわ」
そこまで言って、意外と自分が興奮している事に気付いた。が、勢いは殺さぬまま久瀬を睨みつけた。
久瀬は立ち上がって、何か弁明をしていた。曰く、お前にあんまり可愛げがないから云々。
その言葉に双葉は目を細めると、ころころと笑い始めた。怪訝にこちらを見る久瀬を無視して笑う。そして一頻り笑った後に、
「甘え下手な私が良いから、って言ってくれたのは、誰だったかしら?」
にっこりと笑うと、久瀬が言葉を詰まらせた。その様子に双葉が又楽しそうに笑う。そしてテーブルに置いてある、琥珀色の液体が並々注がれているコップを持ち上げる。そして、
「私、貴方が想う程淡白な人間じゃ無かったみたいね」
それだけ言うと、コップの中身を久瀬に向かってぶちまけた。水が床を打つ音が僅かながら店に響いたが、双葉はさっさと立ち上がって踵を返した。店を出る前にちらりと振り返ると、突然の強襲に咽返る彼氏と、その隣にいた店員が茫然としていたのが面白くて、思わず噴き出しそうになった。
店を出て、ふらふらとネオンの中を歩く。
誰かに愚痴を聞いてもらおうかと携帯を開けたが、着信に並んでいる名前を見てそのまま電源を落とす。コンビニで安い酒を買って家で飲もうか、と帰路から少し道を逸れる。コンビニの駐車場を横切ろうとした所で、ゴミ箱の隣にしゃがみ込んでいる影を見つけて、眉を潜めた。コンビニの照明を背に受けて、丸まる様にして膝を抱えているそれから、双葉は一度目を逸らした。しかし、店に入る一歩手前で呻き声を上げた影に、双葉は足を止めた。
酔っ払いだろうか。どちらにしてもこんな所に座っていては良い営業妨害だろうから声を掛けて立ち去らせるくらいしても良いかも知れない。それにもし何処か悪いのであれば、タクシーを呼んで病院に運んで貰う位した方が良いのかもしれない。
そう考えて、くるりと廻れ右をした双葉は、つかつかと影に近づいて声を掛けた。
友人からもたらされた情報であるが、双葉はそれ自体を咎めるつもりは無かった。今までもキャバクラや合コンに行っていた事はあったが、しかしきちんと「遊び」と「本命」を区別する人だったのだ。それを理解していたから、双葉は何も言わなかった。
しかし、一応「恋人」とか「彼女」とか呼ばれる立場にある双葉の誕生日をメールで済ませといて、自分はゲイバーにいそいそと向かうなんて、許せるだろうか。何も言わずにいられるだろうか。いられる筈が無かった。
即座にパソコンを立ち上げ、久瀬が通っていると教えて貰ったバーの店名を検索に掛ける。ヒットしたサイトを開けて店の場所を調べる。意外と近い事を確認すると、財布と携帯だけ持って、家を出た。
けばけばしいネオン街にヒールの音を響かせて歩く。双葉から出ているオーラのせいか、キャッチですら誰も声を掛けて来ない。一度だけ酔っ払いに絡まれたが、双葉は一瞥すらしなかった。
そして一つの店の前で足を止めた。店名を確認すると、店の前にいたキャッチを無視して中に入り、ぐるりと店内を見渡した。店自体がそこまで広くなかったおかげか、隅の方にある黒いソファーに手足を投げて座り、上機嫌で酒を煽っている久瀬を直ぐに視界に捕えた。久瀬の両隣りには些か男とは思えぬような美貌を湛えた此処の店員が控え、楽しげに談笑している。そんな「カレシ」姿を見た瞬間、彼女の中で何かが急激に冷めていったのを感じた。
双葉は声を掛けて来た店員を一瞥すると、人に会いに来たのだと告げて、真っ直ぐ久瀬の元に向かう。
まだ気付いていない久瀬に、ゆったりと口角を上げた。
そして、久瀬が座っているソファーとローテーブルを挟んだ向かい側に向きあう形で置いてある一人掛けのソファーにゆったりと腰を下ろした。
「こんばんは」
優しげに見える頬笑みを湛えながら双葉が声をかける。そこで漸くカノジョの存在を認知した久瀬の顔から一気に血が引いた。青いを通り越して白い。
その様子を面白げに眺めながら、双葉は口を開いた。
「彼女放っといて男に走るのね」
この言い方は少々この店の人たちに失礼かもしれない、と言う考えが一瞬頭を掠めたが、そんなこと気にしては居られなかった。何か言おうとしている久瀬に構わずに続ける。
「別に何しようが文句言わなかったわよ。今更干渉するのかって思っても仕方ないかもしれない。でもね、誕生日に彼女にメールを寄こすだけで自分はゲイバーに飲みに行く?――ふざけんじゃないわよ。そんなことされたら彼氏が男に走ったって思うじゃない。これならまだ風俗にでも通ってくれてた方が何倍かましだったわ」
そこまで言って、意外と自分が興奮している事に気付いた。が、勢いは殺さぬまま久瀬を睨みつけた。
久瀬は立ち上がって、何か弁明をしていた。曰く、お前にあんまり可愛げがないから云々。
その言葉に双葉は目を細めると、ころころと笑い始めた。怪訝にこちらを見る久瀬を無視して笑う。そして一頻り笑った後に、
「甘え下手な私が良いから、って言ってくれたのは、誰だったかしら?」
にっこりと笑うと、久瀬が言葉を詰まらせた。その様子に双葉が又楽しそうに笑う。そしてテーブルに置いてある、琥珀色の液体が並々注がれているコップを持ち上げる。そして、
「私、貴方が想う程淡白な人間じゃ無かったみたいね」
それだけ言うと、コップの中身を久瀬に向かってぶちまけた。水が床を打つ音が僅かながら店に響いたが、双葉はさっさと立ち上がって踵を返した。店を出る前にちらりと振り返ると、突然の強襲に咽返る彼氏と、その隣にいた店員が茫然としていたのが面白くて、思わず噴き出しそうになった。
店を出て、ふらふらとネオンの中を歩く。
誰かに愚痴を聞いてもらおうかと携帯を開けたが、着信に並んでいる名前を見てそのまま電源を落とす。コンビニで安い酒を買って家で飲もうか、と帰路から少し道を逸れる。コンビニの駐車場を横切ろうとした所で、ゴミ箱の隣にしゃがみ込んでいる影を見つけて、眉を潜めた。コンビニの照明を背に受けて、丸まる様にして膝を抱えているそれから、双葉は一度目を逸らした。しかし、店に入る一歩手前で呻き声を上げた影に、双葉は足を止めた。
酔っ払いだろうか。どちらにしてもこんな所に座っていては良い営業妨害だろうから声を掛けて立ち去らせるくらいしても良いかも知れない。それにもし何処か悪いのであれば、タクシーを呼んで病院に運んで貰う位した方が良いのかもしれない。
そう考えて、くるりと廻れ右をした双葉は、つかつかと影に近づいて声を掛けた。
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